先日、健康診断のために訪れた病院の待合室で、思いがけない再会がありました。
「S.Iさん」——そう呼ばれる名前が耳に飛び込んできた瞬間、ハッとしました。どこかで聞いたような、いや、聞き慣れた名前。受付の方を何気なく見やると、立っていたのは、まさにあのS.I君本人でした。
驚きと懐かしさが一気にこみ上げ、私は思わず声をかけていました。数分というわずかな時間でしたが、私たちは久しぶりの言葉を交わしました。
S.I君は、小学1年生の頃から高校3年生まで実に12年間、ずっと佐々木塾に通ってくれた教え子です。それだけでも十分に印象深いのですが、彼はその後、大学4年間を塾の数学講師として支えてくれた、まさに私の右腕ともいえる存在でした。穏やかで誠実、そして何より、生徒たちからの信頼が厚く、彼が担当する数学の授業はいつも静かで真剣な空気に包まれていました。
だからこそ、大学卒業後に「教師になるものと思っていたのに、神奈川県の企業に就職します」という報告を受けたときは、正直なところ、胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちになったのを覚えています。それでも彼の決断を尊重し、「またどこかで会えるだろう」と思いながら、16年間にわたる彼との歩みにひとまず幕を下ろしました。
それから2年。
その再会の場が、まさか病院の待合室になるとは——人生とは不思議なものです。
そして、彼が伝えてくれたのは、**「今度、公立中学校の数学の先生になります」**という報告でした。
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなりました。まるで、願っていた夢が遠回りして、ようやく辿り着いたような、そんな感覚です。
16年間、佐々木塾とともに歩んでくれた彼が、今度は公立中学の現場で、生徒たちと新たな道を歩み始める——こんなに嬉しいことはありません。親がわが子の成長を見届けるような思いとは、まさにこのことだと感じました。
佐々木塾には、たくさんの生徒たちが通ってきましたが、S.I君という存在は、塾の歴史を語るうえで欠かせない大切なピースです。
彼がこれから出会う生徒たちに、佐々木塾で育んだ温かさと誠実さ、そして確かな学びを届けてくれることを、私は信じて疑いません。
いつかまた、教育の現場でお互いの経験を語り合える日が来ることを楽しみにしています。
ありがとう、そして、おめでとう。S.I先生。