佐々木塾ブログ
佐々木塾の小論文添削実例
去年の2月から今年1月まで小学6年生と中学3年生に小論文指導をした。以前は提出してもらった原稿用紙に訂正箇所を赤で加筆、減筆し、空いたスペースに感想やこういう書き方もあるなどを書いて指導していた。しかしこれだとあまり後に残らないし、指導の質も低い気がしていたので今回は一つ一つワープロで問題の読み方、正しい論文の書き方を書くことにした。1年たてば相当やりとりの原稿がたまってこの先何年かたっても読み返せる財産のようなものになるだろうと考えた。添削例を二つ参考までに上げておく。
立川国際2018年講評
設問の読み込みがあまいです。 設問で聞かれていることをもう一度整理しましょう。 すると、ただ単に将来の夢を聞かれているわけではないということに気がつくはずです。 設問には、オズボーン博士の予想を「ふまえた上で」とあります。 これは、この内容にふれた上で自分の職業について書かなければならないということを示しています。「職業を一つあげる」という設問なので、「今は具体的に決まっていない」は、書く必要がありません。
そして、本文にある「世界問題」や「自動化」など一読では、何を指しているのかわからない言葉があります。 こうした言葉は自分でつくってしまうのではなく、「世界の問題」や「人の仕事が機械に置きかわること」などと言い換えて、確実につたえましょう。 一読で伝わらないらない言葉は、当然減点対象です。 したがって、上記を総合的に判断するとこの年度はもう一度確認が必要です。 採点者は、不合格者を出したくてうずうずしている人だと考えてください。 「設問のキャッチャーミットからはずれたもの」「誤字脱字」「文法事項の間違い」などは、ようしゃなくげん点します。 ちなみに、この問題には、機械やAIに仕事を奪われない人はどんな人か・・? そんな問いかけがされています。 これは大人でさえ答えを出せていない問題です。この問題については、今後考えておく必要があると思います。
早稲田大学高等学院 平成27年
ここ3年間の内容を分析するに、一般的な小論文の対策をしておけば、間違いなく点数は獲得できそうです。つまり、例年はそれだけ素直な問題が出ていると言っていいでしょう。しかし、この年の課題文は、特にとっつきづらい問題でした。この年は、ふたつの小説を読み、それらの共通点を指摘し、類似の例を具体化することが求められています。
また、大学入試の一般入試における小論文の科目は(たとえば慶應義塾大学であれば)、小論文以外の科目が一定水準に達していないと採点してもらえません。この例は、早稲田高等学院も例外ではないようです。つまり、国語・数学・英語が一定水準に達していてその上で、採点がなされます。したがって、「ほかの科目が不得意だけど、小論文で差をつける」はあまり期待できません。したがって、小論文の対策よりも優先度が高いのは国語・数学・英語の科目です。
【設問分析と読解】
まず、小論文の大原則は、設問の分析です。
設問には、「なぜこのようなことが起こるのか」「まわりの人にそのことをどのように理解してもらおうとするか」の2点が問われています。この2つに対応した答えが書けていることが採点の最低基準になってきます。これからは、それぞれ設問の要素を分解し、なにを問われているのかを整理しましょう。
そして、評価を付すならば、それぞれの設問に答えてなくはないが踏み込みが甘いという印象を受けます。
「なぜこのようなことが起こるのか」→「感じ方の違い」を答えに挙げていますが、本番の試験ではこれにさらに踏み込んだ、「なぜそのような感じ方の違いが生まれているのか」まで踏み込んで書く必要があります。「魅力を感じている」が、やや要点をつかめていますがまだ甘いです。
この文章は、高1レベルの現代文で習う「主観・客観」がテーマになっています。
私が認識したものは必ずしも、誰もが同じように認識するわけではない、です。かつて当たり前のように小学校で習った「人にやられて嫌なことは人にしてはいけない」は必ずしも正しいわけではない、ということです。主観は、自分の認識世界での出来事です。対して、客観は現実的に起こっている出来事です。
中学校の国語までは、感情移入できないような登場人物はあまり登場しません。誰もが共感できるような登場人物です。しかし、高校からは一見理解に苦しむような行動をしたり、思考回路を持ち合わせた登場人物が登場します。というのも、多様な価値観を持ち合わせた社会のなかで、そうした人物とでもコミュニケーションがとれるようにするためです。
この主観と客観の話は、それぞれの登場人物によって感じるポイントが違っています。この点を意識して読み、それを反映してあげることが求められます。
文章1の弟の場合、世界との接点は窓の景色と家族しかありません。
文章2の主人公の場合、レストランで受けた感銘は「人生で最高の経験」です。
レストランも窓からの景色も、他人にとっては「なんでもないようなもの」です。しかし、そうした「なんでもないようなもの」にこだわってしまう、執着してしまうことは往々にして起こり得ます。彼らの人生になにかしらの重要な意味を与えているものが、窓からの景色でありレストランでの食事だったのです。このように、「魅力」はここまでの深堀りが期待されます。
次に、「まわりの人にそのことをどのように理解してもらおうとするか」の設問には答えきれていません。
主観の世界にどうやって相手を巻き込むかです。自分がよいと感じているものを相手にもよいと感じさせるには共感しかありません。共感を生むには、ストーリーの力が必要になってきます。ストーリーテリングという言葉を知っていますか?文字通り、物語を語るということです。これが心理学やビジネスの分野で近年のトレンドになっています。なぜか。脳は物語を好むからです。記憶や印象に残るものには、ストーリーがあります。わかりやすい例は、ブランド品です。ブランド品の服は、ユニクロよりも機能が劣る場合があります。すなわち、あったかさだったり涼しさだったりの機能面ではユニクロに劣る場合があります。すぐに経年劣化するのもブランド品の方であることさえあります。しかし、それでも人はブランド品の服を欲しがります。そこには、ブランド品が発するストーリーがあるからです。すなわち、物語を買っているのです。このブランド品を「ほしい!」と思う気持ちが共感であり、それを伝えるのがストーリーの力です。まわりの人にどのように理解してもらおうとするか、のヒントとなるキーワードは、ストーリーになるのではないでしょうか。
【答案へのフィードバック】
本文の要約は、かなり上手にできています。上記を参考にしてさらにブラッシュアップしていきましょう。
以下の点をよく読み、解き直してみましょう。
原稿用紙や字数配分についてです。
訂正したい点を線で消し、横に新しい文章を書くのは、必ずやめましょう。入試本番でそのような文章の書き方をすれば、間違いなく減点されます。本番では下書きをしたり大幅な書き直しを行う時間はおそらくありません。そのため、事前に全体の構成を練り、書き直しが必要ないように慎重に書き進めましょう。これらは一朝一夕にしてできるものではないため、過去問練習の段階から意識して取り組みましょう。
また、字が読みづらいことも指摘します。採点者が読むことを意識して、ていねいに書きましょう。
次に字数配分についてです。
当該高校の小論文試験は、例年900~1200字程度の記述が求められています。そのため、事前に解答全体の構造を整理し、字数配分の目途を立ててから書き始めましょう。
今回の小論文では、二つの設問への解答が求められています。一つ目の設問は、問題文読解を問うているのに対し、二つ目の設問では自分の考えが問われています。小論文の試験においては、後者のような「あなたはどう考えますか」問題がより重要になります。
この小論文の解答では、前半500~600字、後半500~700字程度の字数配分が理想的でしょう。今回の答案では前半に800字弱、後半に300字程度を割いています。前半の文章量がやや多い印象を受けるのに対して、後半の文章量は不足しています。文字数の目安を立てることにより、設問にきちんと解答できているかを自分でも確認することが可能になります。そのため、最初の段階で全体の構成を整理し、解答を書き始めることを意識しましょう。
上記感想などについては次のブログで書いていきたい。
立川国際2018年講評
設問の読み込みがあまいです。 設問で聞かれていることをもう一度整理しましょう。 すると、ただ単に将来の夢を聞かれているわけではないということに気がつくはずです。 設問には、オズボーン博士の予想を「ふまえた上で」とあります。 これは、この内容にふれた上で自分の職業について書かなければならないということを示しています。「職業を一つあげる」という設問なので、「今は具体的に決まっていない」は、書く必要がありません。
そして、本文にある「世界問題」や「自動化」など一読では、何を指しているのかわからない言葉があります。 こうした言葉は自分でつくってしまうのではなく、「世界の問題」や「人の仕事が機械に置きかわること」などと言い換えて、確実につたえましょう。 一読で伝わらないらない言葉は、当然減点対象です。 したがって、上記を総合的に判断するとこの年度はもう一度確認が必要です。 採点者は、不合格者を出したくてうずうずしている人だと考えてください。 「設問のキャッチャーミットからはずれたもの」「誤字脱字」「文法事項の間違い」などは、ようしゃなくげん点します。 ちなみに、この問題には、機械やAIに仕事を奪われない人はどんな人か・・? そんな問いかけがされています。 これは大人でさえ答えを出せていない問題です。この問題については、今後考えておく必要があると思います。
早稲田大学高等学院 平成27年
ここ3年間の内容を分析するに、一般的な小論文の対策をしておけば、間違いなく点数は獲得できそうです。つまり、例年はそれだけ素直な問題が出ていると言っていいでしょう。しかし、この年の課題文は、特にとっつきづらい問題でした。この年は、ふたつの小説を読み、それらの共通点を指摘し、類似の例を具体化することが求められています。
また、大学入試の一般入試における小論文の科目は(たとえば慶應義塾大学であれば)、小論文以外の科目が一定水準に達していないと採点してもらえません。この例は、早稲田高等学院も例外ではないようです。つまり、国語・数学・英語が一定水準に達していてその上で、採点がなされます。したがって、「ほかの科目が不得意だけど、小論文で差をつける」はあまり期待できません。したがって、小論文の対策よりも優先度が高いのは国語・数学・英語の科目です。
【設問分析と読解】
まず、小論文の大原則は、設問の分析です。
設問には、「なぜこのようなことが起こるのか」「まわりの人にそのことをどのように理解してもらおうとするか」の2点が問われています。この2つに対応した答えが書けていることが採点の最低基準になってきます。これからは、それぞれ設問の要素を分解し、なにを問われているのかを整理しましょう。
そして、評価を付すならば、それぞれの設問に答えてなくはないが踏み込みが甘いという印象を受けます。
「なぜこのようなことが起こるのか」→「感じ方の違い」を答えに挙げていますが、本番の試験ではこれにさらに踏み込んだ、「なぜそのような感じ方の違いが生まれているのか」まで踏み込んで書く必要があります。「魅力を感じている」が、やや要点をつかめていますがまだ甘いです。
この文章は、高1レベルの現代文で習う「主観・客観」がテーマになっています。
私が認識したものは必ずしも、誰もが同じように認識するわけではない、です。かつて当たり前のように小学校で習った「人にやられて嫌なことは人にしてはいけない」は必ずしも正しいわけではない、ということです。主観は、自分の認識世界での出来事です。対して、客観は現実的に起こっている出来事です。
中学校の国語までは、感情移入できないような登場人物はあまり登場しません。誰もが共感できるような登場人物です。しかし、高校からは一見理解に苦しむような行動をしたり、思考回路を持ち合わせた登場人物が登場します。というのも、多様な価値観を持ち合わせた社会のなかで、そうした人物とでもコミュニケーションがとれるようにするためです。
この主観と客観の話は、それぞれの登場人物によって感じるポイントが違っています。この点を意識して読み、それを反映してあげることが求められます。
文章1の弟の場合、世界との接点は窓の景色と家族しかありません。
文章2の主人公の場合、レストランで受けた感銘は「人生で最高の経験」です。
レストランも窓からの景色も、他人にとっては「なんでもないようなもの」です。しかし、そうした「なんでもないようなもの」にこだわってしまう、執着してしまうことは往々にして起こり得ます。彼らの人生になにかしらの重要な意味を与えているものが、窓からの景色でありレストランでの食事だったのです。このように、「魅力」はここまでの深堀りが期待されます。
次に、「まわりの人にそのことをどのように理解してもらおうとするか」の設問には答えきれていません。
主観の世界にどうやって相手を巻き込むかです。自分がよいと感じているものを相手にもよいと感じさせるには共感しかありません。共感を生むには、ストーリーの力が必要になってきます。ストーリーテリングという言葉を知っていますか?文字通り、物語を語るということです。これが心理学やビジネスの分野で近年のトレンドになっています。なぜか。脳は物語を好むからです。記憶や印象に残るものには、ストーリーがあります。わかりやすい例は、ブランド品です。ブランド品の服は、ユニクロよりも機能が劣る場合があります。すなわち、あったかさだったり涼しさだったりの機能面ではユニクロに劣る場合があります。すぐに経年劣化するのもブランド品の方であることさえあります。しかし、それでも人はブランド品の服を欲しがります。そこには、ブランド品が発するストーリーがあるからです。すなわち、物語を買っているのです。このブランド品を「ほしい!」と思う気持ちが共感であり、それを伝えるのがストーリーの力です。まわりの人にどのように理解してもらおうとするか、のヒントとなるキーワードは、ストーリーになるのではないでしょうか。
【答案へのフィードバック】
本文の要約は、かなり上手にできています。上記を参考にしてさらにブラッシュアップしていきましょう。
以下の点をよく読み、解き直してみましょう。
原稿用紙や字数配分についてです。
訂正したい点を線で消し、横に新しい文章を書くのは、必ずやめましょう。入試本番でそのような文章の書き方をすれば、間違いなく減点されます。本番では下書きをしたり大幅な書き直しを行う時間はおそらくありません。そのため、事前に全体の構成を練り、書き直しが必要ないように慎重に書き進めましょう。これらは一朝一夕にしてできるものではないため、過去問練習の段階から意識して取り組みましょう。
また、字が読みづらいことも指摘します。採点者が読むことを意識して、ていねいに書きましょう。
次に字数配分についてです。
当該高校の小論文試験は、例年900~1200字程度の記述が求められています。そのため、事前に解答全体の構造を整理し、字数配分の目途を立ててから書き始めましょう。
今回の小論文では、二つの設問への解答が求められています。一つ目の設問は、問題文読解を問うているのに対し、二つ目の設問では自分の考えが問われています。小論文の試験においては、後者のような「あなたはどう考えますか」問題がより重要になります。
この小論文の解答では、前半500~600字、後半500~700字程度の字数配分が理想的でしょう。今回の答案では前半に800字弱、後半に300字程度を割いています。前半の文章量がやや多い印象を受けるのに対して、後半の文章量は不足しています。文字数の目安を立てることにより、設問にきちんと解答できているかを自分でも確認することが可能になります。そのため、最初の段階で全体の構成を整理し、解答を書き始めることを意識しましょう。
上記感想などについては次のブログで書いていきたい。